INSIDE ORIGIN|大西 裕輔

インタビューコンテンツ「INSIDE ORIGIN」第14回のゲストは、フォトグラファー、映像ディレクター、そして地元・熊本で飲食店の経営者の顔を持つ実業家。多岐にわたる大西裕輔氏の活動を貫いているのは、自己表現としてのクリエイティブではなく、驚くほど実直な「人助け」という哲学です。

コロナ禍という逆境を機に動き出した大西氏のキャリアは、シューズブランド「PATRICK」のフィロソフィーとどう響き合っているのか。単なる「格好いい」のその先にある、大西氏がビジュアルに込めた「意味」と、創造の原点を紐解きます。

Photo_Nobuyasu Sakagami
Interview_Yusuke Hosoi
Edit_Toshihiro Otake

大西裕輔[ディレクター兼焼鳥屋]

1997年、熊本市生まれ。ディレクター兼焼鳥屋。
2020年3月の大学卒業直後、コロナ禍による緊急事態宣言の影響で案件が消失し、入社予定の制作会社を即退社。実績も機材もない状態から「新卒フリーランス」としてキャリアをスタートさせた。元バイト先のカフェのSNS運用で売上を数倍に伸ばした成果を実績に、着実に案件を獲得していく。
2021年に制作会社を設立し、翌年には未経験ながら焼鳥店を開業。現在は制作業と飲食業を両立させ、シューズブランド「PATRICK」のビジュアル制作統括や自治体ブランディングなど、領域を横断した活動を展開している。現場での撮影技術にPR・マーケティング視点を掛け合わせ、「クリエイティブに意味を持たせる」戦略的思考が武器。根底には一貫して「人助け」の哲学があり、自身の経験を次世代へ伝える活動も行う。無類のサンフレッチェ広島ファン。

@holydroopycat

ー 普段のご活動やご自身について簡単にご紹介をお願いいたします。

大西裕輔氏(以下、大西):大西です。写真や映像の撮影、ディレクションを中心に行っています。また、地元の熊本で飲食店(焼き鳥店など)の経営や、自治体の広報・ブランディングに関わるなど、クリエイティブを軸にジャンルを横断した活動をしています。

ー 様々なバックグラウンドをお持ちですが、大西さんのクリエイターとしての「原点」(=ORIGIN)はどこにあると感じていますか?

大西:学生時代の「BOOK AND BED TOKYO」でのインターンの経験は、私の活動の原点であり、今の私を作る大きな土台となっています。

一つは、技術的な原点です。「予約サイト用の写真が足りないから、お前撮ってみるか?」と声をかけられたのがきっかけでした。それまで感覚的にしか触れていなかったカメラの基礎のF値、シャッタースピード、ISO感度といったプロとしての基礎知識を、現場で徹底的に叩き込まれました。

もう一つは、思考の原点です。師匠のような父のような存在の方から教わった、「クリエイティブに意味を持たせる」という考え方です。「ただカッコいいだけの映像や写真はあまり意味がない。それがどう広まるのか、PRとしてどんなフックがあるのかを考えた方がいいよ。」と言われ続けたことが、今の私のマーケティング視点を持ったディレクションに直結しています。

もしあの時、あの場所でこの経験がなければ、今の私はなかったと思います。何もないどん底の時期に、カメラという「武器」と、戦略的な「思考法」を同時に授かったあの時間が、今の私の原点です。

ー 大西さんは、写真や映像のディレクションだけでなく、地元・熊本での飲食経営など、ジャンルを超えて活動されていますよね。これらすべての活動に共通する、大西さんご自身の「こだわり」があれば教えてください。

大西:私のあらゆる活動の根底にあり、全ての仕事の指針となっているのは「人助け」という精神です。 「人助け」という言葉は、少し恩着せがましく聞こえてしまうかもしれませんが、写真や映像の制作、飲食店の経営に至るまで、私のスタンスは一貫しています。それは「自分が何を作りたいか」という自己表現よりも先に、「目の前の人やブランドが何を求めているのか、自分はどう役に立てるのか」という問いが常に中心にあることです。

例えばクリエイティブの仕事では、単に美しいビジュアルを作ることをゴールにしていません。その写真や動画が、クライアントが抱える課題をどう解決し、ブランドをどう良い方向へ導く「助け」になるかを一番に考えます。パトリックとの仕事においても、ブランドが大切にしてきた歴史や熱量を、今の時代に最適な形で世の中に届けるための「手助け」をしたいという想いでシャッターを切っています。

熊本での飲食店経営も同様です。そこを訪れる人々や地域にとって、明日への活力になるような場所、誰かの支えになるような場所を作りたい。ジャンルはバラバラに見えるかもしれませんが、私にとってはどれも「誰かの力になりたい」という想いを形にするための異なる手段に過ぎません。

この「人助け」という実直なこだわりこそが、私の活動の背骨であり、作り手としての誠実さの源だと思っています。

ー 初めてPATRICKに触れたときのことを憶えていますか?また、そのときの印象を教えてください。

大西:鮮明に憶えています。2005年、私が小学3年生の時です。当時、地元・熊本のサッカークラブ「ロアッソ熊本」に、熊谷雅彦選手(ボランチ)という中心選手がいました。

サッカー少年だった私の目に飛び込んできたのは、彼が履いていたパトリックのスパイクでした。当時は「サッカースパイクのラインといえば3本」という固定観念が子供心にあったので、パトリックの2本線を見て「なんで3本じゃないんだろう?」「あの2本線のブランドは一体何なんだ?」と、強烈な違和感と好奇心を抱いたんです。

気になってすぐに調べ、「パトリック」というブランドを知りました。あのアッパーのデザインと特徴的な2本線のシルエットは、それまで見てきたどのスパイクとも違う、どこか知的で洗練された印象として記憶に刻まれました。

今の自分にとって、パトリックのビジュアルを作る仕事は、あの時スタジアムのピッチで目を奪われた「原体験」の答え合わせをしているような、不思議で感慨深い縁を感じています。

ー 現在、PATRICKのビジュアルをご担当されていますが、お仕事として関わる前と後で、PATRICKというブランドに対する印象に変化はありましたか?

大西:仕事として関わる前は、歴史ある老舗ブランドの一つというイメージが強かったです。

プロジェクトをご一緒して一番驚いたのは、中にいるスタッフ一人ひとりの溢れんばかりの「ブランド愛」です。これまで多くのグローバルブランドのお仕事も見てきましたが、巨大な組織ゆえにどこかシステム化された「冷たさ」を感じることも少なくありませんでした。しかしパトリックは全く違ってました。

社員の方々は、当たり前のようにパトリックを履いていて、自分たちのプロダクトに対する誇りを肌で感じます。組織の規模が大きすぎないからこそ、一人ひとりの熱量がダイレクトにブランドの体温となって伝わってくる。中の人たちが本当にこのブランドを愛し、楽しんで運営しているという「体温のある温かさ」を強く感じました。

今のパトリックの印象は単なるスニーカーブランドではなく、作り手の深い愛情と情熱によって支えられている、非常に人間味のある温かいブランドだという印象を持っています。

ー 実際にPATRICKのビジュアルを制作(撮影・ディレクション)する際、ブランドのどのような魅力を最も引き出そうと意識されていますか?

大西:最も意識しているのは、今の時代における「最適解としてのバランス感」です。

パトリックには、長年ブランドを支えてきた上の世代の根強いファンの方々がいます。その一方で、私の役割は、自分たちの世代やさらに若い層に対していかにパトリックの魅力を「自分事」として届けるかだと思っています。

具体的には、クリエイティブが「尖りすぎて」一部のファッション層だけに閉じてしまわないこと。同時に、これまでのパトリックのイメージをなぞるだけの「いつも通り」になりすぎて、新しい発見がなくなってしまわないこと。その絶妙な中間地点を、撮影のコンセプトごとに毎回模索しています。

また、単に「カッコいい画」を撮るのではなく、「ユーザーにどう伝わるか」というマーケティングの視点を大切にしています。パトリックが持つ「ものづくりの歴史」や「背景にあるストーリー(ネタ)」という揺るぎない強みを、現代の空気感でどう翻訳すれば、より多くの人の心に届くのか。

「ファッションとしての格好良さ」と「ブランドが持つ温かい人間味や歴史」。この二つの魅力を掛け合わせ、広いターゲットに響くような、体温の宿ったビジュアル作りを常に心がけています。

ー これまでの撮影やクリエイティブ制作の中で、特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

大西:特に思い入れが強いのは、パトリックの新しいシリーズ「PATRICK ORIGIN」のローンチにおける、ファーストコレクションの撮影です。

この時、私から提案させていただいたのが「東京の色」というコンセプトでした。単にスタジオで靴を綺麗に撮るのではなく、パトリックのシューズが持つ色彩を、私たちの日常にある東京の風景に重ね合わせて表現したかったんです。

PATRICK ORIGIN 1stコレクション ビジュアル

大西:具体的には、「ベージュは日本橋の歴史ある建物」「赤は東京タワー」「緑は山手線」といった具合に、それぞれのモデルのカラーを都市のアイデンティティと紐付けました。これは、かつてのインターン時代に学んだ「ただカッコいいだけのものを作るな。そこに意味(ネタ)を込めろ」という教えを具現化したものでもあります。

パトリックの「フランス生まれ」「日本製」という背景と、私たちが今生きている「東京」という舞台を、色彩という共通言語で翻訳する。このプロセスを経て出来上がったビジュアルは、これまでのパトリックにはなかった新しいアプローチとなり、ブランドの「今」を象徴する非常に印象的なプロジェクトになりました。

ー PATRICKは「普遍的なデザイン」や「ものづくりの精神・姿勢」といったブランドの「原点」を大切にしています。大西さん自身のものづくりに対する哲学と、PATRICKのフィロソフィーが共鳴すると感じる部分はありますか?

大西:「プロダクトの背景にある『意味』や『重み』を何よりも大切にする」という一点において、非常に深く共鳴しています。

かつて私がインターン時代に叩き込まれたのは、「ただカッコいいだけのものは作るな。そこに意味を持たせろ」という教えでした。表面的な美しさや流行を追うだけのクリエイティブは、一瞬で消費されて消えてしまいます。しかし、そこに確かな「ネタ(ストーリー)」や「文脈」があれば、それは時の試練に耐えうる「表現」になります。

パトリックのシューズもまさに同じです。ブランドが守り続けてきた普遍的なデザインや、日本の職人の手仕事は、単なるスペックではなく、ブランドが長い年月をかけて積み上げてきた「意味」そのものです。新しく何かを作ろうと思っても、一朝一夕には手に入らない「歴史という名の重み」がそこにはあります。

「意味のあることを形にしたい」という私のものづくりへの渇望と、パトリックが130年以上の歴史の中で紡いできたフィロソフィー。この両者が重なり合うことで、単なる広告写真ではない、ブランドの魂を宿したビジュアルが生まれるのだと確信しています。

ー 普段からPATRICKをご愛用いただきありがとうございます。最近はどのようなモデルをよく履かれていますか?

大西:一番履いているのは、フットサル用のトレーニングシューズです。といってもこのシューズでプレーはしていなくて、普段履きとして街から雪山まで、どんなところにでも履いて行ってます。

ヴィエンヌ・ターフ|VIENNE-TF(BLK)

先日の雪山での撮影では、雪の上でも滑らずに撮影できました(笑)

アートイス・オリジン|ARTOIS-OG(ORG)

大西:また、PATRICK ORIGINのファーストコレクションで発売された、アートイス・オリジンもお気に入りの1足です。自分の中では、東京タワーのカラーです。 自分はアメカジが好きだった影響もあり、あえて少し大きめのサイズを選び、紐をギュッと絞って履くスタイルが気に入っています。

2026SS PATRICK ORIGIN コレクション

大西:最新のコレクションでは、サッカーのスパイクを彷彿するデザインの「マエストロ」や、「リバプール」が気になりますね。

2023年 大西氏撮影のビジュアルイメージ

大西:自分が最初にPATRICKの撮影で携わった、Jazzy Sportとコラボレーションモデルの「コテージ」は、DEAD STOCKで大切に保管してます。

ー 今後、PATRICKと取り組んでみたい表現や企画があれば教えてください。

大西:今後、PATRICKと取り組んでみたいのは、ブランドが持つ「内側の熱量」と「圧倒的な歴史」を、よりダイレクトに世の中にぶつけていくような表現や企画です。 PATRICKが長年培ってきた「ものづくりの歴史」や「背景」は、他の新しいブランドがどれだけ資金を投じても絶対に真似できない最大の武器です。

ただ、少しもったいないなと感じるのは、その素晴らしさや、社員の方々の底知れぬ「ブランド愛」が、まだ十分に外へ伝わりきっていない部分があることです。
だからこそ今後は、その内に秘めた熱量を外へ向けて開放するお手伝いがしたいです。歴史あるブランドゆえに、時に「今までやってこなかったから」と保守的になりがちな部分もあるかもしれません。しかし、これからは「やってこなかったからこそ、あえて挑戦してみよう」というマインドで、これまでの枠にとらわれない新しいビジュアルのアプローチや企画を一緒に仕掛けていきたいです。

数あるスニーカーブランドの中で、「なんとなく」ではなく「やっぱりパトリックがいいよね」と、より多くの人に選ばれるように。そんな新しい波を作るきっかけを、ブランドの方々と一緒に生み出していきたいですね。

ー 最後に、まだPATRICKのシューズを履いた事のない方に向けてメッセージをお願いします。

大西:パトリックはモデル数が豊富で、バリエーションの幅広さが魅力です。
今の時代、人と被らない一足を求める方も多いと思いますが、パトリックなら自分のスタイルにフィットする一足がきっと見つかります。

実際に、私の周りでもPATRICKを履く人が増えてきています。
本質を見極める方々がすでに注目しているこの魅力を、ぜひ一度履いてみてください。

ー 大西さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!


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