MORINOKUTSU 対談企画「森と共に生きていく」

左:インタビューアー 伊澤良樹さん

中央:小国町森林組合広報 入交律歌さん

右:小国町森林組合 林業作業士 徳永満貴さん





伊澤:
徳永さんが木こりになられたきっかけや経緯などを教えてください。

徳永:以前は飲食業界で料理人として20年ほど働いて、キャリアの終盤で狩猟の免許を取ったのですが、なかなか森に入るという経験がなく実際に狩に行くことが出来なかったんですね。山のことが分からなかったので、林業をやればよくわかるだろうと木こりの道に進みました。小国を選んだのは、林業大学校に通っているときにクラスメイトと訪れた中で、木も大きくて、良い山なんだろうなと感じてここで林業がしたいなと直感的に思ったからです。森にずっといると木や森、そして山の様子の変化を1年を通して感じることができて、それを一番近くに感じられるのが木こりだと思いました。

 



伊澤:
趣味としての狩猟でも良かったのに、職種を変えてまで林業に携わる特別な理由があったのですか?

徳永:飲食業はものを仕入れて使うのみで、還元することがないのをずっと感じていて、山で取れるもの、自然にあるものを使うことが地球にも良いことなんだろうと、今からでもそういう職業を選んでも良いのかなと思い決断しました。自分としては自然の流れといった感じでしょうか。


 

伊澤:現在、木こりになって何年ですか?木に魅了されるところはありますか?

徳永:一年半ですね。仕事として覚えることは沢山あって、その過程は前職とも似ていて3年とか5年とかをみっちりやらないと基礎的なことは身に付いていかないと感じています。木もそれぞれ個性があるんですね、立ち姿だったり倒した後の丸太の様子だったり、木の肌目や枝葉の様子も一つ一つ違うので、そこはとても興味深く魅力的なところだと思います。




 

伊澤:入交さん、森林組合に入ったきっかけを教えてください。

入交:10代の頃に進路を考えていたとき、環境問題がメディア等々で取り上げられていて、当時はヨーロッパの酸性雨の被害が大きいとか、森がなくなっているとか砂漠化が進んでいるといった報道を見て強い危機感が湧きました。そこで環境問題をなんとかしたいと感じて、私は森に携わっていこうと直感的に思い立った感じでしたね。そこから大学で学べば学ぶほど森の素晴らしさに気づき、土の素になるのも森で、水の素になるのも森で、そもそも空気自体も森が生み出していて、豊かな海で魚が取れるのも、森から流れてきた腐葉土の栄養分が鍵になっていると。人間が生かされているその全てを、森が担ってくれていたんだと衝撃を受けたんです。でも大学では専門的な言葉での説明は多いのですが、これをどうやって一般の人に伝えていけば良いのかを考えて、一度広告代理店へ就職をして情報発信の経験を積もうと。そして小国町森林組合で企画職の募集がありましたので応募して現在にいたります。現在は森林組合に入って10年目です。

伊澤:森林組合に入ってこの10年、どんなことを感じていますか?学校で教わったこととの違いなど教えてもらえますか。

入交:大学では、森には微生物や動物がいて花が咲いてという生態的な部分と、山主さんそして木を切る人がいてそれを売る人がいるという、人の営みが関わってくる流通のビジネスの話と、その2つの面があるというのは学んでいました。でも実際に現場に来てみて、その両方をバランスよく良い方向に進めていくのはとても難しいことなんだと実感しています。森の存在は私たちの生活にとってとても重要なものですが、現実的には環境の部分だけを切り取って話はできないと感じていて。私は10年経っても答えは見つけられておらず、業界も今に至るまで最適な答えを見出せていないような、大きな課題だと感じています。

伊澤:色々な学びや現場を経験した上で今一番伝えたいこととは?

入交:いろいろ伝えたいことはあるのですが、いちばん伝えたいことは、食物は毎日摂る、触れることがありますが、木材は身近に全くない状況でも生活することができるでしょうし、身の回りに木があることを感じながら生活されている方は少ないのではないかと思います。でも都会でビジネスをするにしても、田舎で農業をするにしても、全部森が基になっているということをもう一度皆さんに思い出してほしいなと思っています。そういったことに気が付かないまま過ごしている方も多いと思いますし、もっと知ってもらって実際に木を使ってほしいなと思っています。



 

伊澤:森林組合と木こりさんのお仕事はどういったものでしょうか?

入交:森林組合は会社ではなく協同組合というかたちで、農業でいうとJA(農協)さんと同じ位置付けになります。山主さんたちが林業をより良く経営するために組合を立ち上げていて、そこに雇われている私達職員は、木を切ってもらう木こりさんを手配したり、その切った木を高く売れるよう販売したり、山主さんに還元できるよう努めます。あとは山主さんと話し合いながら、その森をどういう森にしたいかなどをプランニングして森の保全管理をしたりしています。

徳永:山主さんから依頼があった木を切るのが主な仕事で、真っ直ぐではない木もあるので、それを良い状態の丸太に採材したり、高く売るために加工したりしています。天候に左右される仕事で、雨が降っても木を切って倒すことはできますが、それを加工するための重機を入れる作業道には制限ができて、作業の幅は狭まります。また風が強い日は、倒す際に方向が変わる危険があるのでできないときもあります。

 


 

伊澤:そもそも森の役割とはどういったことでしょうか。

入交:森は、水を蓄え、空気を生み出し、人間を含む生き物が棲む環境を育んでくれています。また、私たちの生活のあらゆるところで材料として使われています。例えば都会にいる方でも、きっと毎日紙に触っていると思うのですが、その原材料には木が入っています。そして木の用途としていちばん分かりやすいのは、住宅や施設、内装などの建築関係ですね。農業、漁業にも繋がっていて、私たちが食べている野菜、お米の栄養分の元を辿っていくと山にある落ち葉、枯葉が基になっていて、それが川をつたって流れて畑に、それを活用し農業が育まれています。海の環境を考えたときに、魚がよく集まってくる漁場とか養殖が行いやすい場所の上流には良い山があると言われています。過去には森を伐採しため豊かな栄養分が海へ流れていかなくなり、漁場が荒れたときがあったそうで、それに気づいた漁師さんたちが森を守ろうと行動したので魚も戻り、赤潮などの被害も起きなくなったと言われていて、様々な研究からも証明されています。

 

 

伊澤:森と海は繋がってるんですね。森の役割を改めて考えさせられます。木を植えただけではサステナブルではないとおっしゃっていましたが、そこを詳しく教えていただけますか。

入交:木を植えること自体はもちろん良いことで次世代のための環境作りの第一歩です。ただ、今は木を植えるといってもどこもかしこも成長した木だらけで、それらを伐って植える場所を作らないと植えられないといっても過言ではありません。「植樹」は良いイメージを持たれ、人にも伝えやすい言葉ではありますが、その奥に本当のサステナブルを考えてもらえるのであれば、今は木を伐って使うところから始めることが先です。人が植えた木を使わずに放置することで起こる問題ももちろんあって、今の言葉で言うと”密になりすぎている”  。苗が大きくなってきたときに、隣の木との間隔が近すぎると木がうまく育たず、やせ細った樹々が並ぶ薄暗い森になります。これが、いわゆる死の森と言われている状態です。密過ぎて枝を伸ばせないから葉に光が当たらなくなって光合成ができない、元気に成長できないので足元を支える根も弱くなり、豪雨災害時には根こそぎみんな流れていってしまうということが起きやすくなります。それがニュースでは森がきちんと整備されていないからだとなってしまいます。放置せずに伐って使ってもらえれば、ここまで弱ることはなかったかもしれないのに。これは悲しいことです。私たちが木を使うことを少しでも意識することで木と木の間を間引くことができ、そうすると森に光が入って1本1本が枝を伸ばし、森が力強く育つので環境を守ることにもつながる。元気に育った木は木材としての品質も良く、高く売れるから山主さんにとっても良い、という良い循環ができるのです。そもそも現状は植えている量よりも使う量が圧倒的に少なすぎるので飽和状態になってしまっています。先ずは木を使うということをしていかないと次世代の森作りが進まない状況です。

 

 

伊澤:実際にその死の森を見に行きました。植樹をしてそのまま放置している森。ただ植えただけで間伐をしていないので光が当たらない。本当に墓場というような雰囲気で。

入交:日本中に死の森が増えています。小国町は林業の意識が高いと言われており、まだ状況は良い方かもしれませんが、産業としてまわらなくなり、林業に重きをおかなくなってしまった地域は珍しくありません。木は光に向かって伸びたいのですが、隣同士が近くてなかなか成長できず、どうにか光を浴びようとすごい捻じれをおこしている木もあります。それを見る度に木の叫び声を聞いているかのように思います。植えられた木が消費されていない理由のひとつとしては、戦後、日本の木を適正価格で販売しようと集中して植樹したのに、木の成長が需要に間に合わず、代わりに海外からの安い木の輸入が増えていき、置き換わってしまった。日本の木が売れなくなり残っていっている一因です。海外、例えば東南アジアなどの森林は日本と違って平地が多く、大きい重機を入れ効率よく大量に伐ることができるため、船で運んでもそっちの方が安く、日本で大事に育ててきた木よりも経済的にコストがかからなかったりします。また、昔は日々の暮らしの燃料としても薪や炭などの木を使っていましたが、私たちが効率を求めて化石燃料等にシフトした結果、自然から離れた生活を選んでいるのが実情です。

 

 

伊澤:「森の靴」を通して森と人との共存をみんなで一緒に考えられたらなと思っています。もちろん靴を履いた人も森について考えるきっかけになってほしいです。この靴は全身で森と向き合っている木こりさんが、仕事が終わっても森と繋がってリラックスできるようにスリッポンタイプで伸縮性のある素材を使っています。カラーは「森の迷彩(カモフラージュ)」と「森の空気」の2色があります。森の迷彩は四季によって変わる森の無限の色に、木こりさんのユニフォームのオレンジ色を入れ、自然と人との共存を表現しています。「森の空気」は透明色でもあるグレーのツートーンで森の中の澄んだ空気を表現しています。お二人の森に対する思いが靴を通してみんなに伝わったら嬉しいです。入交さん、徳永さん有り難うございました。