【クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー】 対談企画
今回【クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー】対談企画ということで、SUZETTE HOLDINGS(シュゼット・ホールディングス)の駒居氏、西山氏にお話を伺ってきました。この両者といえば過去にクープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリーの日本代表選手として活躍された業界屈指のシェフです。
interviewer_Hirofumi Ueno
Photo_Motoi Matsuhiro
駒居 崇宏
Takahiro Komai
クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー 2017 日本代表。フランスでの世界大会では見事銀メダルを受賞した。
西山 未来
Mirai Nishiyama
クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー 2019 日本代表。フランスでの世界大会では見事銀メダルを受賞した。日本の代表およびチームリーダーに女性が選出されるのは史上初。
ブランドの紹介
ーおふたりがパティシエになったきっかけを教えてください。
駒居:元々はコンピューターを作る専門学校に通っていて、学生の頃に中華料理屋でアルバイトをしていたので、料理かコンピューターどちらの道に行こうか悩んでいたんですが、その時はコンピューターの道を選びました。最終的に料理(お菓子)を選んだのは、アンリ・シャルパンティエで働いていた友人がいて、その彼のフィナンシェを作る過程を見たことがきっかけです。
フィナンシェは、卵、小麦粉、アーモンド、砂糖、バターの主に5種でできているんですが、それって全て最終的な出来上がりを想像して粉や液体を混ぜ合わせてオーブンに入れて膨らんで形になっていきます。固形の材料とは違って、形になっていないものが出来上がっていくことに面白みを感じたことがきっかけです。お菓子作りの面白さもありますし、綺麗な仕事じゃないですか。それが21歳の時です。
西山:小中高と陸上をやっていたんですが、このままやり続けることはないと思っていました。高校3年生で将来を考えた時、家庭科だったり図工だったり、何でも作ることは好きでした。自分が作ったもので人に喜んでもらえたのは、高校生までの経験の中でお菓子作りだったので、ケーキ屋さんがいいかなと(笑)夜の専門学校へ1年半通い卒業しましたが、すぐには就職しませんでした。その後、アンリ・シャルパンティエの求人募集があり就職に至りました。ただ、働き始めても特に面白みを感じられず、3年目のタイミングで芦屋にアンリ・シャルパンティエの路面店がオープンすることになり異動、何か変わるかなと思っていたんですが、特にそういったこともなく、もう実家へ帰ろうと考えていました。そんな時に、駒居さんがちょうどパリから帰ってこられ、それが駒居さんとの初めての出会いになります。芦屋の路面店では駒居さんがシェフを務めていて私の上司になった訳ですが、駒居さんの働いている姿をみて「同じ空間にこんなにケーキで人を喜ばせることができる人がいるんだ」と感じました。3年間、自分にずっと言い訳をしながら働き続けてきましたが、私も働き方、考え方を変えればこの仕事を楽しめるのかなって。ただ、一度会社を辞めることになり、一年後「戻ってこないか」と連絡をいただき、今に至ります。駒居さんと出会ってなければ、この職には就いていないですね。人の喜ばせ方を常に教わっている感じ。お菓子作りもそうですけど、ご自身も楽しまれていると思います。駒居さんの周りにいる人たちは楽しんでいる方が多い。今日みたいに、私が話すと駒居さんの会みたいになるんですよ(笑)
駒居:笑
西山:ふたりの取材なんですけど、先輩の良いエピソードを語る人みたいな。でも、私ほど想っている人はいないですよ(笑)駒居さんがいるから、ここにいると言い続けている。働きやすい環境を作られているので、周りからも慕われているんじゃないでしょうか。
ーおふたりの会社内での仕事内容をお聞きしてもよろしいでしょうか。
駒居:製造本部長と商品本部長、2つの本部長をしています。主に管理の部分ですね。「テクニカルアドバイザリー室 スペシャルアドバイザー」という肩書きもあるので、商品開発にも携わっています。
西山:私は商品開発をしています。
アンリ・シャルパンティエ、シーキューブ、カサネオという3ブランドを持っているので、その商品開発です。作りながら管理する、プレイングマネージャーです。
ー実際に作れると企画面でも発想が変わってきそうですが。
西山:企画は担当が別にいるので開発とはまた違いますね。企画からお題がでて、開発でアレンジできる部分はプラスオンしていく感じです。形にしますが、そこから面白みを出すためにエッセンスを加えた方が面白いんじゃないかとかを考えながら、後はどうしたらお客様に響くかなと、なので企画と開発は似たようなものではありますね。
ー開発側から企画への提案もあるんですか。
駒居:あります。基本は開発側からの提案が多いんじゃないでしょうか。
西山:ただ、開発から「モノ」から動いてしまうと何がやりたいか、その「モノ」を売るだけになってしまうので、「モノ」を売るだけではなくて、「コト」も売りましょうという考え方です。もちろん「モノ」を売るだけではなくて、どういった風にお客様へ食べていただきたいか、どういったシーンで使用していただきたいかというのを企画側が考えるので、「モノ」だけを売りましょうってなると企画側が追いついてこれない。なので基本的には企画があって、それらを考えた上で開発側にオーダーが通って作るのが正解のルートなんですけど、「モノ」を動かさないと発売が間に合わないとかもあるので試行錯誤しています。
ークープ・デュ・モンドの印象を聞かせてください。
駒居:出場は2017年。目指したきっかけは入社した時から、「何かをやりたい、何かをやらなければ他に勝てない」と思っていて、マジパン細工から始めました。マジパン細工の日本の大会で賞を取ったので、一旦コンクールから離れて、フランスに1年半ほど行ったんですね。その時に兄のように慕えるフランス人シェフと出会って濃密な1年半を過ごしたんですが、ちょうど私が日本へ帰る前日の夜に、そのシェフと朝まで飲んで、帰りのタクシーに乗りながらセーヌ川を横目に涙を流しました。
西山:涙、流したんですか?
駒居:やっぱり感慨深いものがあって、兄のような存在の人と1年半ずっといて、そのシェフが日本へ来て何かを成し遂げることはなかったので、何かフランス人シェフに恩返しできることはないかなっていうのを思いながら帰りました。その後、2007年に日本がクープ・デュ・モンドの世界1位になっているんですけど、以前PATRICKさんで取材されていた藤本さん (藤本シェフ取材:https://patrick-labo.jp/130831/) の凱旋講習を受講し聞きに行ったんですね。色々な話を聞いている中で、「これだ」と日本からフランスに行って、そのシェフに恩返しができる、喜びを分かち合えることができるなと思ったのが2007年で、そこから10年かけて行くことができました。
ークープ・デュ・モンドは誰もが出たい大会だとお聞きしましたが。
駒居:ずっとコンクールに挑戦されている方は、そこを最終的に目指されていると思います。私はマジパン細工で止まりかけていたので、もう一度コンクールに出たいと思ったのは藤本さんたちのお話を聞けたことがきっかけですし、フランス人のシェフと知り合ったこともきっかけで、もう一度やってやろう、絶対あの場に立ちたいと思ったのがきっかけですね。
西山:私は全くコンクールに興味がなかったです(笑)コンテストがあるというのは知ってましたけど、クープ・デュ・モンドのことはあまり知らなかったです。なぜ始めたかというと、駒居さんから「私と一緒に仕事をしたい気持ちがあるのならコンテストにも挑戦しなさい」という話をいただいたのがきっかけです。そして駒居さんの助手として、クープ・デュ・モンドを経験することになりました。ただ、その内容がハードすぎて、私には絶対に無理だと思っていたんですけど、大会を終えた後に駒居さんから「あなたも出てみたら?」、「あちらから見る世界は全然違うよ」と。助手として一緒にやってきたつもりでも、最終的に立ち位置が違うことで、私もそちら側を見てみたいという気持ちになりました。ただ、大変な姿を隣で見てきているので、やっぱりできない・・・・・・と言っていたんですけど、世界に行った人の周りは世界の人間が集まっていて、私もその場にいさせてもらえることが多くなってきて「やれる環境があるのならやったみたら?」と周りの声がありました。それでもなかなか決意することは出来なかった。最終的に出場を決めたのは、アンリ・シャルパンティエOBの花口さん(1997年に世界大会に出場)に「出てないあなたが大変なんて言ったらダメ」と言われたからです。そこからがまた大変な日々でしたが、駒居さんが前大会に出場をしていて、どれだけ大変かをすでに会社が理解していたので、やりやすい環境を与えていただいたと思っています。
2023年日本代表選手着用モデル
駒居氏が団長としてこちらのモデルを着用
ー最後にパトリックの印象を聞かせてください。
駒居:初めて購入したのは大人になってからですね。1足目はソールが薄いモデルでしたが、ソールは厚いタイプの方が履き心地も良く好きですね。つい最近購入したのが黒の防水タイプでマラソンです。
ーウォータープルーフシリーズのMARARAINですね。
駒居:店舗では関東店舗の日本橋店と関西店舗の梅田店に行ったことがあります。
西山:パトリックってフランスのシューズですよね?白と青の組み合わせでSET(セット)というモデルを履いています。
ーシーズン限定モデルのSET 75ですね。
西山:服も合わせやすいですし、すごく良いです!
2023年開催の次大会に出場される新日本代表選手に向けて、
「結果を求めて、世界一を目指して!大会本番まで犠牲にしないといけないこともあると思うので、そこも理解しながら自分をどこまで高めていけるのか。やっぱり私たち以上のことを目指していくべきだと思うので、そうなると世界一になる。それを掴み取れるかです。私も団長として、大会が終わった時に私から見て、3人でやり切って良かったと思ってほしい。その後もずっと友情が続けられるような、3人であれるような大会にしてほしいなと思います。」
最後は駒居さんに、熱い思いを語っていただきました!
選ばれた者だけが着ることができる日本代表ユニフォーム。色んなコト(日の丸)を背負った責任感や、覚悟。そして、世界一に挑戦する精神はすごく刺激になりました。物作りに対しての情熱も感じることができ、ジャンルは違えど同じ「モノ」,「コト」を提供する立場として勉強になり、有意義な時間を過ごせました。
駒居さん、西山さん、今回は貴重なお話をありがとうございました!
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